当時、おそらく初めて聴いたのが、まだ若くてかわいらしい秋吉さんの写ったジャケが印象的なアルバム(多分「The Toshiko Trio」)で、既にポール・チェンバースとエド・シグベンとのトリオだったから、とんでもない奴がいるなと思ったけれど、聴いて、もっとびっくりしたのは、完全にバド・パウエルのスタイルを踏襲(こんな表現では伝わらないほど激烈)していることだった。
それ以来彼女のファンだが、その最初に聴いたアルバムがトリオだったから、ピアノの人だと思っていた。
高校時代はビル・エヴァンスをよく聴いていたし、他もピアノ・トリオのフォーマットのものを、ジャズとしては好んで聴いていて、友だちなんかがビッグバンド、カウント・ベイシーなんかを聴いているのが、正直あまり理解できなかった。
小編成のほうがいいと思っていたのだ。
自分が大学生の頃だったと思うが、秋吉さんがアメリカでビッグバンドを率いて大成功していたので、自然それらを聴くようになった。
最初に聴いたのは『砂漠の女』だったと思う。
これまた完全にデューク・エリントンのスタイルで、重厚かつ凄まじいフレージングをこなす演奏力にまず圧倒されたが、それを譜面にする彼女の才能を思うと、もはやひれ伏すしかない、と思うくらいの感銘を受けた。
その後も、遡って『ロング・イエロー・ロード』や、あるいは先へ進んで『モノポリー・ゲーム』『カーネギーホール・コンサート』あるいはエリントンへの追悼盤、ブルーノートでのラスト・ライブ盤まで、かなり聴いた。
ジャズの本場、アメリカでも高く評価され、アメリカのジャズ専門誌『ダウンビート』では秋吉とルー(・タバキン、サックス/フルート奏者、秋吉さんの今の旦那)のビッグバンドは批評家投票で1979年から5年連続、読者投票では1978年から5年連続で共に1位を獲得している。
その後、彼女は「ビッグバンドをやっていると、編曲に時間がかかるのでピアノが巧くならない」との理由で、バンドを解散した。
ニューヨークでの最後のコンサートには、多くのアメリカ人のファンたちが聴きにきていて、どこかのテレビ局のインタビューにたいして、ニューヨーカーらしい聴衆のひとりが「非常に残念だ、彼女のバンドは最高なのに」と答えていたのが印象的だった。
彼女は今はピアノに専念しており、最近の作品では『ソロ・ライブ・アット・ケネディ・センター』なんかをよく聴いている。
この盤に関しては、もはや、ジャズとかそういう次元なのか?と言った感じ。
もちろんバドの作品なども弾いているのだが、スタンスとしては矢野顕子なんかに近い。
あるいは、矢野顕子のほうが秋吉さんのファンなのかもしれない。
ジャンルとかカテゴリーとか、それは単に売る側がやりやすいからそうしているだけであって、弾くほう/聴くほうにとってはどうでもいいのだ、と改めて思った。
今、秋吉さんのことを考えると、もしかするとマンディ満ちる(最初の夫、チャーリー・マリアーノ(アルト・サックス奏者)との間にできた秋吉さんの娘)のほうが有名なのかもしれない。
古くはMondo Grosso(モンド・グロッソ、大沢伸一によるプロジェクト)に欠かせない人脈として、あるいは俳優としても活躍したこともあるが、日本におけるアシッド・ジャズ・ムーブメントのミューズのひとりだろう。
秋吉さんご本人は、もうかなりのお年だが、例えば『秋吉敏子 渡米50周年 日本公演』等を聴くと、まだまだ全然「老いて寄る年波」なんて言葉や形容には無縁だ。
個人的には、旦那さんのタバキンと共に、もちろん生涯現役でがんばって頂きたい。
日本が誇れる(最高峰の)ミュージシャンのひとりなのだから。
『The Toshiko Trio』(1956年、ピアノ・トリオ)

『Carnegie Hall Concert』(1992年、ビッグバンド)
![Live at Carnegie Hall [Import, From US] / Toshiko Akiyoshi (CD - 1992) Live at Carnegie Hall [Import, From US] / Toshiko Akiyoshi (CD - 1992)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/412YCWPVK2L._SL160_.jpg)
『Solo Live at the Kennedy Center』(2000年、ピアノ・ソロ)

『Carnegie Hall Concert』から「After Mr. Teng」
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